『 大きな才能と小さな心 』
男は自分の才能を自負していた。
自分は大物になる人間だと信じていた。
其の日もいつも通りアトリエに居た。
そして一枚の絵を描いていた。
美しい女の絵を描いていた。
そして其の絵は完成した。
男は完成した絵を見て、身震いした。
キャンパスにはしなやかな長い髪、滑らかな白い肌をした、此の世のもととは思えないほどの美しい女が描かれていた。
「是は名作だ、俺はすごいものを描いてしまったぞ」
男はそう思った。
男はじっと其の絵を見ていた。
「世に出したら間違いなく絶賛され、俺は一躍有名人だ」
男はそう思った。
男は未だ其の絵を見ていた。
「しかし世に発表したら此の美しい絵を沢山の人間が見る事になる」
男は考えた。
男はずっと其の絵を見ていた。
「そんな事をしたら勿体無い、此の最高傑作は誰にも見せたくない」
男は考えた。
男はひたすら其の絵を見ていた。
「此の最高傑作は俺だけのものだ、誰にも見せてなんかやるものか」
男は決めた。
男は其の絵をアトリエの隅に隠した。
「やっぱり俺は天才なのだ、俺は大物になるぞ」
男は確信した。
by.華
【Lyrics in H/S】1件更新。
《04:独占欲/gloomy13》
『 奏 』
何故なら、彼には
奏 奏 奏 唄えよ
奏 奏 奏 生まれよ
今宵も月が美しく、太陽を
夜空に開いた穴を覗いて、
何故なら、
奏 奏 奏 舞えよ
奏 奏 奏 生きよ
混ざり合う
大きき小さきを慈しみ、
光は差す場所を選ばず、
花は咲く場所を選ばず、どんな
奏 奏 奏 唄えば
奏 奏 奏
生まれ来る
奏 奏 奏 貴方は
奏 奏 奏 私は
by.華

【H/S's 画廊】1作追加更新。
『 珈琲と煙草と僕のリビング 』
朝の空気はツンと冷たくて、それでもって澄んでいる。
まだ眠たい、こじ開けた目と、止まらないあくびをしながら、朝の珈琲を煎れる。
頭はもやがかかった状態なのに、手さばきは見事なものだ。
モーニングコーヒーは必ずドリップする。
少し濃い目のブラック、フィルターはメリタを使い、豆はイタリアンブレンド。
コロンビア産の豆がいい。香り高く苦味が強くて、朝の目覚ましのには最適の一杯だ。
先ず、500円玉大の円を描きながら、少しの湯で豆を蒸らす。
この時の香りが絶品なのだ。うっとりしてしまう。
僕の珈琲好きときたら、インスタントでも缶コーヒーでも、珈琲が飲めれば何でも良いといった有り様だ。
但し、朝だけは必ずひと手間かけてドリップする。
これは彼女譲りの習慣だ。
彼女の趣向は何かと優雅だった。
お茶の時間を大事にするし、安い菓子は好まず、時間があれば手作りの見事な菓子で招いてくれる。
なんとかジェンヌ的優雅さは、仕草のひとつひとつにもしなやかだった。
彼女の出て行ったリビングで、陶器の白いカップをすする。
生活のあらゆる趣向も、心も、僕の全てのコントロールは取り戻したのに、なんでだ。
僕になりきれない僕を見つけて、少し苛立ちを覚えつつ・・・あぁ、珈琲が美味しい。
新しい朝、珈琲と僕。
思い出したように、彼女の嫌いな煙草をくわえた。

by.華
【Lyrics in H/S】《04:コントロール/Love13》更新。






















